退職金制度がない会社はヤバい?最新労働動向と損しない防衛策
退職金制度がない会社に勤務している、あるいは転職先の労働条件にその事実を見つけて息をのんだ経験を持つ人は少なくないはずだ。「老後の資金はどうなるのか」「自分は損をしているのではないか」という焦燥感は、物価高と実質賃金の伸び悩みが続く中で一段と増している。連日のように日経電子版などの経済メディアが報じる通り、終身雇用を前提とした日本の伝統的な給与体系は崩壊の途上にある。
ネット上でも話題は途切れない。Yahoo!ニュースのコメント欄を開けば、「制度がないなんてヤバすぎる」と警戒する声がある一方で、「退職金に期待するより月給を増やしてもらう方が理に叶っている」という現実的な意見も交錯する。実際のところ、退職金制度がない会社で働くことは個人のキャリアや将来の資産形成にどのような影響をもたらすのだろうか。単なる不安論に惑わされず、市場構造の変化を見極める必要がある。
退職金制度がない会社はヤバい?最新の労働市場動向と実態
「退職金が出ない会社=悪徳企業」というイメージは、もはや過去のものとなりつつある。最新の雇用データを紐解くと、退職金制度を設けない企業は年々増加傾向を見せている。
かつては中小企業を中心に散見された退職金ゼロの動きだが、近年では大手企業のグループ会社や新興企業へと急速に波及した。背景には、終身雇用の衰退と流動的な労働市場の形成がある。生涯一つの会社に捧げる時代が終わりを迎えた現在、退職金を前提とした長期的インセンティブの効力は急速に薄れているのだ。
労働者が退職金を期待して低賃金で我慢する構造自体が形骸化しつつある。会社側に頼り切る終身雇用モデルから脱却し、自らの足でキャリアを構築する姿勢が試されている。
退職金がない企業のメリット・デメリットを解剖する
制度の有無だけで企業の良し悪しを断定するのはあまりに早計だ。退職金がない会社には、明確なメリットと目に見えるリスクの双方が存在する。
最大メリットは、毎月の給与や賞与に還元されやすい点だ。退職金として将来に繰り延べるはずの原資が月々の手取りに反映されるため、手元資金の流動性が圧倒的に高まる。20代・30代の若手層にとっては、若いうちに資金を得て自己投資や早期の資産運用に回せるアドバンテージがある。
他方で、最大のデメリットは老後資金の自助努力が不可避になることだ。会社が勝手に積立をしてくれないため、無計画に手取りを使い果たせば、退職時に一括して受け取れるまとまった資金はゼロとなる。税制上の優遇措置である「退職所得控除」をフル活用できない点も、長期的には見過ごせない経済的損失となり得る。
厚生労働省データと労働法・就業規則から読み解く企業側の本音
公的データは現在の変化を如実に物語っている。厚生労働省が公表する「就労条件総合調査」のデータによれば、退職給付制度を導入している企業の割合は徐々に減少し、今や全体の約2割の企業が制度を持たない。
法的な側面を整理しておくと、労働法・就業規則において企業側に退職金の支払いを強制する規定は存在しない。退職金制度の有無や支給基準は、あくまで各企業の就業規則に委ねられている任意項目に過ぎないのだ。
日本経済団体連合会(経団連)が推し進めるジョブ型雇用の導入や、政府の働き方改革推進プロジェクトの加速により、企業は「年功序列型の退職給付制度」の維持から脱却しつつある。人件費の固定化を防ぎ、優秀な人材に対して即座に高い給与で報いる人事戦略への転換が、制度未導入の背景には隠されている。
iDeCoと新NISA推進事業を活用した具体的な資産形成術
退職金がない会社に身を置く労働者が取るべき戦略は明確だ。会社に期待する代わりに、国の優遇制度を活用して「自分専用の退職金」を自力で構築すればよい。
その筆頭がiDeCo(個人型確定拠出年金)と、金融庁が主導する新NISA推進事業に伴う非課税制度の活用である。岸田文雄前首相が打ち出した「資産所得倍増プラン」以降、個人の資産形成を後押しする環境は劇的に整った。iDeCoは掛金が全額所得控除となるため、毎年の節税効果を得ながら老後資金を積み立てることができる。
運用の手法に悩む必要はない。故・山崎元氏をはじめとする多くのパーソナルファイナンスの識者が長年主張してきたように、低コストの全世界株や米国株のインデックスファンドを愚直に積立購入し続ける手法が最も合理的とされる。退職金がないからこそ、税制優遇口座をフル活用した自動積立の仕組み作りが急務となる。
IT・通信業界や人材サービス業界に広がる個人の防衛策
業界ごとの動向に目を向けると、退職金制度の有無に関する捉え方は大きく異なる。流動性が極めて高いIT・通信業界では、退職金制度の非導入はすでに一般的な選択肢となっている。
スピード感が求められるIT・通信業界では、同一企業に数十年在籍すること自体が稀だ。退職金を後払いで受け取るよりも、現時点でのスキルに応じた高額な年俸やストックオプションを好むエンジニアが多いためである。また、最新の人材サービス業界の意識調査でも、退職金の有無よりも「現在の提示年収」や「リモートワーク等の柔軟な働き方」を重視する求職者が大半を占める結果が出ている。
自分の所属する業界の特性を見極め、退職金に縛られない柔軟なキャリア構築と定期的な市場価値のアップデートを行うことが、現代の労働者における最強の自衛策だ。
損をしないための自己防衛策:今すぐ始める将来リスク回避術
退職金がない状況に不安を感じて立ち止まる時間はない。今すぐ実践できる具体的な防衛策を整理しておこう。
第一に、自らの月給のうち「退職金相当額(目安として基本給の10〜15%程度)」を先取り投資に回すルーティンを確立すること。給料が口座に入った瞬間に自動で新NISAやiDeCoへ資金が移動する仕組みを作れば、意志の力に頼らず資産は確実に積み上がる。
第二に、自身の市場価値を客観的に把握し続ける努力だ。会社が退職金を出さない以上、自分自身のスキルこそが最大のアセットとなる。万が一の事態や将来の収入ダウンに備え、ポータブルなスキルを磨き、いつでも好条件の職場へ移れる準備を怠らないこと。退職金制度の有無を会社選びの「踏み絵」にするのではなく、自分自身の資産形成スキルのバロメーターとして捉え直すことが、将来のリスクを確実に回避する道筋となる。 (出典: 退職 金 制度 が ない 会社(Yahoo!ニュース))