世界一臭い缶詰シュールストレミングの真実!安全な開け方と現地の食べ方
テレビのバラエティ番組やYouTubeの企画などで、リアクション芸の代名詞として扱われることが多いスウェーデン生まれの缶詰「シュールストレミング」。その桁違いの異臭から「生物兵器」などと揶揄されることも少なくありませんが、本来は北欧の過酷な冬を生き抜くために育まれた由緒正しい伝統食です。
なぜここまで凄まじい悪臭を放つのか、そしてネット上で語られる「正しく食べれば極上の珍味」という噂は本当なのか。本稿では、臭気測定器のデータに基づく悪臭のメカニズムから、室内開封が絶対NGとされる物理的な理由、絶対に失敗しない水中開缶の手順、さらには通販やディスカウント店での入手ルートまで、現場感あふれる視点で徹底解剖します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:シュールストレミングはくさやの約6倍に達する悪臭数値を記録する「世界一臭い缶詰」であり、室内での開封は甚大な異臭被害を招くため厳禁。
- 要点2:缶内で殺菌されず発酵が進行し続けるため、気圧変化による破裂リスクから国際航空路線では危険物として持ち込みが禁止されている。
- 要点3:風通しの良い屋外で水中に沈めて開け、薄焼きパンやジャガイモ、サワークリームと合わせるスウェーデン流の食べ方なら芳醇な旨味を楽しめる。
【悪臭の正体】なぜ世界一臭いのか?アラバスター値8070Auが示す破壊力と発酵の仕組み
シュールストレミングが放つ強烈な臭気の根本にあるのは、独特の製法です。一般的な缶詰は加熱殺菌を行って中身を無菌状態に保ちますが、シュールストレミングは加熱殺菌を一切行わない「生の塩漬け発酵食品」として缶に密封されます。
材料となるのは、春先にバルト海で獲れる新鮮なモルタ(産卵前のニシン)。これを薄い塩水に漬け込んで樽で一次発酵させた後、まだ発酵が活発に続いている状態で缶に封入します。すると缶の内部で嫌気性細菌(Haloanaerobium属など)がニシンのタンパク質を分解し、硫化水素(腐卵臭)、酪酸(使い古した靴下のような酸臭)、プロピオン酸(汗の臭い)、酢酸といった強烈な揮発性化合物を大量に生成し続けます。
悪臭の度合いを数値化する「アラバスター測定器」による計測では、日本の代表的な発酵珍味である「くさや(焼き立て)」が1267Au、納豆が452Auであるのに対し、シュールストレミングは驚異の8070Auを記録。これはくさやの約6.3倍、納豆の約18倍に相当し、名実ともに「世界一臭い缶詰」の王座に君臨し続けている明確な証拠です。
【室内開封は絶対禁止】缶がパンパンに膨らむ理由と飛行機持ち込み禁止の危険性
シュールストレミングを購入した人がまず驚くのが、缶の形状です。通常の缶詰とは異なり、上下のフタが丸く膨張し、今にも弾けそうな状態になっています。これは不良品ではなく、缶の中で菌が呼吸を続け、二酸化炭素や硫化水素ガスを充満させている正常な発酵の証です。
賞味期限が近づくほど内部圧力は高まり、最悪の場合は缶の継ぎ目から発酵液が噴き出す「自然破裂」の事故すら引き起こします。そのため、国際民間航空機関(ICAO)の危険物規則に基づき、エールフランスや英国航空をはじめとする世界主要航空会社では手荷物・受託手荷物を問わず飛行機への持ち込みが全面的に禁止されています。上空での気圧低下によって機内で破裂した場合、飛行機全体に耐え難い悪臭が充満し、運航不能に陥る重大インシデントになりかねないためです。
また、日本の住宅事情において「室内での開封」は致命的な大惨事を招きます。噴出した発酵液のミストが部屋のクロス壁、カーテン、フローリングの隙間に染み込むと、市販の消臭剤や換気程度では一切太刀打ちできません。完全消臭に特殊清掃が必要となり、数百万円規模のリフォーム費用を請求された賃貸トラブルの実例もあるほどです。どんなに好奇心があっても、密閉された室内での開缶は絶対に避けてください。
【失敗しない安全な開け方】屋外の「水中開缶」が鉄則!飛び散りを防ぐ完全手順
シュールストレミングを無事故で開封するためには、事前の準備と開け方の手順を完璧に守る必要があります。周囲数百メートルに住宅や通行人がいない、風通しの良い屋外スペースを必ず確保してください。
【開封に必要な道具リスト】
・深めのバケツ(または大きなボウル)
・水(バケツいっぱいに張る)
・透明な大型ゴミ袋(45L〜70L)
・缶切り
・使い捨てゴム手袋、レインコート、保護メガネ
・キッチンペーパー、密閉保存袋(ジップロック等)
【安全な水中開封の5ステップ】
1. 完全防備を整える:万が一の飛沫に備え、汚れても処分できる雨合羽を着用し、ゴム手袋と保護メガネを装着します。
2. 水中・袋内トラップの設置:水を張ったバケツの中にシュールストレミングを沈め、そのバケツごと透明なゴミ袋の中に入れます。
3. 水中でファーストカット:缶を水底にしっかりと固定し、水面下で缶切りを差し込みます。「プシュー」という音とともにガスと濁った液体が噴き出しますが、水とビニール袋が二重のシールドとなって飛沫を完全に遮断します。
4. ガス抜きと全開:内部の圧力が完全に抜けきったことを確認したら、水中でフタをぐるりと切り進めて開封します。
5. 身の引き上げと洗浄:缶からニシンの切り身を取り出し、きれいな冷水や炭酸水で表面の発酵液をさっと洗い流します。この「洗う」工程を挟むことで、身に残る過剰な臭気成分が劇的に低減されます。
【スウェーデン伝統の美味しい食べ方】現地のリアルな味の感想とおすすめレシピ
罰ゲームとして缶から直接ニシンを口に放り込み、悶絶する光景がメディアで擦り切れるほど流布していますが、これは本国スウェーデンの人々からすれば「刺身用の生ワサビを丸かじりして不味いと叫んでいる」ような冒涜的な行為に他なりません。
現地ノールランド地方では、夏の終わりに親族や友人が集まり「シュールストレミングスシーヴァ(Surströmmingsskiva)」と呼ばれる屋外パーティーを開きます。そこでの伝統的な食べ方は、洗練された調和の取れた料理です。
【伝統的な食べ方「クレンマ(Klämma)」の作り方】
・主役を支える台座:トゥンブロード(Tunnbröd)と呼ばれるスウェーデンの薄焼きフラットブレッド(トルティーヤや薄切りライ麦パンで代用可)に、有塩バターをたっぷりと塗ります。
・素材のトッピング:皮と骨を取り除いて小さく刻んだシュールストレミングの身、茹でてスライスしたジャガイモ(現地では粘り気のあるマンデルポテト)、みじん切りにした赤玉ねぎ、チャイブを乗せます。
・酸味とまろやかさの融合:仕上げにスメタナ(または濃厚なサワークリーム)をひとすくい乗せ、くるりと巻いて頬張ります。
実際にこのスタイルで口に運ぶと、強烈だった悪臭のトゲは玉ねぎの辛味とサワークリームの乳脂肪分によって綺麗にマスクされます。口いっぱいに広がるのは、「超濃厚なアンチョビ」や「極上の熟成塩辛」を彷彿とさせる圧倒的なアミノ酸の旨味です。強烈な塩気と芳醇な発酵香がジャガイモの甘みを引き立て、アクアビット(北欧のハーブ蒸留酒)やキレのあるピルスナービールとの相性は抜群と言えます。
【どこで買える?】ドンキや通販の値段相場と安全な保存・入手方法
日本国内でシュールストレミングを手に入れたい場合、最も確実なのはAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの大手ECモールや輸入食材専門サイトです。北欧食材を扱う正規代理店が出品しており、通年で購入が可能です。
実店舗に関しては、「ドン・キホーテで買える」という噂がネット上で散見されますが、実際のところ全店で定番展開されているわけではありません。一部の大型旗艦店(MEGAドン・キホーテなど)がイベント時期やバラエティグッズコーナーでスポット入荷するケースはありますが、常時陳列している店舗は極めて稀です。また、発酵が進みすぎるのを防ぐため、本来は冷蔵保存(チルド管理)が必須の商品であり、常温棚に並んでいるものは缶の劣化が進んでいるリスクがあります。
【購入時の価格相場とチェックポイント】
・通販の実勢価格:1缶(内容総量400g〜475g)あたり6,000円〜9,000円前後が相場です。輸入コストやクール便の配送料が含まれるため、一般的な魚缶詰と比較すると高価格帯となります。
・配送温度帯の確認:購入時は必ず「クール便(冷蔵)」で発送してくれるショップを選んでください。常温配送されると輸送中のトラック内で急激に発酵が進み、手元に届いた時点で破裂寸前になっている危険があります。
・自宅での保管方法:商品が到着したら未開封であっても即座に冷蔵庫のチルド室へ入れ、開缶予定日まで低温で発酵を休眠させておくのが鉄則です。
【シュールストレミング】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:缶がパンパンに膨らんでいますが、これ以上放置すると本当に破裂しますか?
A1:はい、常温で放置し続けると発酵ガスが限界に達し、缶のシーミング部分から液体が噴出したり、缶自体が破裂したりします。入手後は必ず冷蔵庫で保管し、缶が球体に近付くほどに変形している場合は速やかに屋外で水中処分してください。
Q2:誤って衣服や皮膚に発酵液がついてしまった場合、臭いは落ちますか?
A2:皮膚についた場合は、ステンレス石鹸でこすり洗いした後にレモン汁やクエン酸水を塗り、弱酸性石鹸で念入りに洗浄すると和らぎます。ただし、布製品や革製品に染み込んだ場合は繊維の奥まで臭気成分(酪酸など)が定着するため、通常の洗濯ではほぼ落ちず、廃棄せざるを得ないケースがほとんどです。
Q3:食べ切れずに残った中身はどのように保存・廃棄すればいいですか?
A3:開封後の身は空気に触れると急速に酸化して不快な臭いが倍増します。残った場合は密閉性の高いジッパー付き保存袋を二重・三重にして冷蔵保存し、2日以内に食べ切ってください。廃棄する際は、新聞紙に吸わせてジップロックに密閉し、燃えるゴミの収集日当日の朝に出すのが近隣トラブルを防ぐマナーです。
まとめ:正しい知識と敬意を持って楽しむ北欧の伝統文化
シュールストレミングは、単なる悪ふざけの小道具ではありません。冷蔵技術が存在しなかった中世スウェーデンにおいて、貴重な塩を節約しながら冬を越すためのタンパク源を確保しようとした先人たちの知恵が生んだ、極めて高度な発酵文化遺産です。
「世界一臭い」という衝撃的な側面ばかりがクローズアップされがちですが、「屋外で水中に沈めて開ける」「ニシンの身を洗って薬味・乳製品と合わせる」という正しいアプローチさえ踏めば、発酵食品ならではの奥深い旨味の世界を堪能できます。もし挑戦する機会があれば、安全対策と周囲への配慮を万全にし、北欧の食文化への敬意を持ってその真価を味わってみてください。 (出典: シュール ストレミング(Yahoo!ニュース))